悪沢岳(わるさわだけ)(東岳)3141m

悪沢岳(荒川岳)

静岡県、静岡市。以前は国道362号から県道60号と行っていたのだが、畑薙湖から静岡市を目指すと自然に県道27号で帰る事になる。そのほうが道路もよく近いような気がする。ただ、1本道ではないので少しわかりにくい。国道1号静清バイパスから県道27号へ入る。県道27号は玉機橋(たまはたばし)の信号で左折し川を渡る。詳しくはGPSデーターを参照してください。静岡市街から畑薙湖まで全て舗装道路である。湖畔の沼平まで少し未舗装の部分がある。沼平のゲートの手前には広い無料駐車スペースがある。

2005年9月30日 快晴

赤石岳より−−−>

11:50 荒川小屋出発。13:42 6分休憩。14:03 分岐。14:23 分岐。6分休憩。14:36 荒川中岳(→)。風が強い。なんだかここに来るといつも風が強いような気がする。地形のせいだろうか。
14:42 荒川中岳避難小屋(←)。16:00 荒川東岳。19分休憩。16:44 丸山。17:20 千枚岳。17:31 二軒小屋分岐。暗くなり始める。でもここまで来ればあと少しだ。17:53 千枚小屋。

荒川東岳

千枚小屋に到着するとすっかり暗くなっていた。小屋でテントの受付をする。どちらへ行かれますかと聞かれて椹島と答えるとバスを予約しますかと聞き返してきた。いいえと答えるとけげんそうな顔をした。バスの予約をしない人は皆無なのだろう。食事は大丈夫ですかと聞かれて、水さえあれば大丈夫と答える。テント場は少し遠いという事なので5分くらいですかと尋ねると答えをにごす。もっと遠いのだろうか。それとも変な場所なのか。不安ながらも水を汲んでからテント場に向かう。水は前回来た時と同じで、小屋の横の蛇口から汲めた。暗い水平な小道をわずかに下る。しばらく行くと広場に出た。ここなのか?誰もいないしわからない。周囲にも開けた場所があったが何処でも似たようなものなので、ここにする事にした。やや傾斜があるが、そう不満でもない。周囲は木が多く、真っ暗で何か動物が出てきそうで、ちょっと不気味。後でGPSデーターを確認したところ200m程度だった。5分程度の距離だろう。

10月1日 快晴

朝は快晴。しかし、格別見る景色もなく、早々に出発。千枚小屋で日の出を見た(←)。

5:32 テント場出発。5:37 千枚小屋。5:43 千枚小屋出発。6:09 駒鳥池。4分休憩。7:03 見晴し(→)。右の写真のところを少し登ると見晴らしのいい林道にでる。ここからは赤石小屋、荒川小屋、赤石岳、悪沢岳、千枚岳がよく見える。31分休憩。7:43 蕨段。8:17 清水平。清水平手前で大きな荷物の2人に出会う。聞けば今日で5日目とか行っていた。そう距離を長く歩いたわけではなく、1人は80歳近い年齢なのでゆっくりと歩いているからという。ある意味うらやましい。以前にも会ったような気がする。14分休憩。9:10 林道。9:26 11分休憩。9:54 林道。10:47 車道。10分休憩。11:17 椹島。

清水平の清水

赤石登山口まで来ると自転車に何か紙がついていた。駐車禁止?自転車の駐車禁止なんて聞いた事が無い。何か問題なのだろうか。恐る恐る近づいてみると、警察が遭難の事情を聞きたいので椹島の事務所まで来て欲しいとあった。なんて事だ。彼は遭難したのだろうか。紙を取って椹島の事務所を目指す。椹島は大きく、事務所がどこにあるのか初めて来た人にはわからないだろうが、私は以前、来た事があったので場所はわかる。
事務所へ行って紙を見せると、すぐにわかって名前と住所、電話番号を書かされた。そんなものは赤石小屋でも書いているのに。それ以外にはさして聞かれる事もなかった。心配になったので逆に聞いてみると、遭難という事になって警察などが既に捜索しているという。それと、以前青薙山へ行った時に車のキーとリモコンを落としていたので、届けがないか聞いてみる。キーはここには無かったようだ。それ以上は何も言われなかったので、とりあえず引き返し、途中のテーブルのあるベンチで休憩。ビスケットを食べる。私も捜索に加わるべきだろうか。しかし、周囲は何事も無かったかのように平静だ。人1人が死ぬかもしれないのに。しかし、すぐに私は食料が尽きている事に気がついた。ここでは入手できそうもない。電池も充電しないと。1度、静岡まで戻って来る事になれば出発は早くても明日になる。遭難してから3日目だ。私には捜索の経験もなく、よくわからないが、遭難して捜索隊が出ても探せる事はニュースなどを見ていると少ないように思う。大抵は自力でどこかとんでもない場所で発見されるような事が多いように思う。そもそも彼は何故遭難したのだろうか。遭難した付近は下草が無く登山道でなくても比較的歩きやすい。登山道は比較的はっきりしている。部分的には岩の上を歩く所がある。岩の上はトレースが見つけにくいので迷いやすい。それとも獣道へ入ったのだろうか。しかし、道を間違えたとしても恐らく10分も歩かないうちに登山道は消えて、わからなくなるはずである。熊に襲われたのなら、引きずられた跡とか、遺留品があっても不思議じゃない。そうなると可能性の高いのは登山道を無視してどんどん進んでいるだろうという事。でも上の方は下草や木があって登山道以外を登る事は困難だろう。遭難した付近は歩きやすいが上に行けば登山道の下は急な崖だったりする。そういう場所を登るのは相当な時間がかかる。登山道は登りやすいようにうまくできている。聞いたところによると、道に迷って川沿いに下ろうとしても滝などがあって下れない場合が多いそうである。では何故迷ったのだろうか。恐らく初心者だったのだろうと思う。私自身、百名山を登り始めの頃は道も無いような所を行くのではないかと想像した。しかし、実際はそうではなかった。百名山のような有名な山は多くの人が登るので、はっきりと道ができる。時にはわかりにくい所もあるが、それはほんの1部である。しかし、初心者はそれを知らない。私自身もそう思ったのだから彼がそう考えても不思議はない。もう1つの可能性としては、数時間で小屋まで行けるのだから登山道を通らなくても行けると考えたかも知れない。山を登るのは疲れる。1度、高い所まで登ると、道に迷ったとわかっても下ってまた登りなおすというのがおっくうになる。しかし、実際は登山道以外を行くと、容易には登れないので、戻って登山道を行くほうが近道である。しかし、初心者にはそうは思えないのだろう。
登山道かどうかよくわからない道を歩いている時は非常に不安になる。そういう時に安心するのが歩いた跡を見つけた時。登山靴のくっきりついた土を見るとほっとする。しかし、場合によっては人の足跡かどうかわからない時もある。鹿は登山道とは関係なく、かなり急な所でも移動する。そうすると登山道から少し外れた所に足跡をつけたりする。よく見ても動物なのか人間なのかわからない場合がある。時によっては靴跡を見つけて安心していると、しばらくして本当の登山道に出て、今まで来た道が登山道では無かった事に気づく時がある。前を歩いた人も同じように間違ったのだろう。登山道の見分け方には注意が必要である。
色々と思案しているうちに私自身、道もない所を歩いた経験がないので自分が遭難したらと考えた。GPSを持っているので迷う事はないが、アクシデントが起きたらどうなるのか。誰にも気づかれずに死ぬしかない。せめて2人で行くほうがいいだろう。でなければ、トランシーバーで誰か常に待機してもらって1時間ごとに連絡を取って現在位置を知らせるとか。いずれにしても準備も無しには行けない。3日も山の中を歩いたら相当な距離を行った事になる。そう簡単には追いつけない。周辺の地理もわからず詳しい地図も持っていない。結局、どうする事もできずにこのまま帰る事にした。

11:38 椹島出発。12:36 5分休憩。13:08 笊ヶ岳登山口。13:34 青薙山登山口。14:20 沼平ゲート。

帰りは少しは登りのところがあって、歩いて登ったが概ね楽な道で自転車で楽に帰れた。急な坂ではスピードが出すぎるのでブレーキを掛けながら下った。帰りの車の中でも何とか助ける方法はないかと思案した。人工衛星からの写真で見つけるというのはどうだろう。1mくらいのものも識別できるというから有効かもしれない。でも人間を見つける事ができるのかどうか。赤外線写真だったらどうなのだろう。人間の体温でわかりやすい。でも鹿とかもいるから区別がつかない?鹿などは夜行性だから、1時間くらいの写真を比較して移動してなかったら人間という可能性が高いだろう。しかし、木の下だったら赤外線も役に立たない。そもそもどうやって捜索しているのだろうか。歩いていたら100人で探しても見つからないかもしれない。ヘリコプターとかでも探しているのだろうか。ヘリコプターの音はしなかったように思う。ヘリコプターは高価だし、木の陰は見えない。最適なのはモーターパラグライダーとかで探すのがいいかも。低空で探せるし、メガホンとかで広い場所に出るように呼びかけできる。家に帰ってインターネットで衛星写真のサイトを見つけたが使い方もわからずに断念した。たぶん詳細な画像は有料になるだろうから無理だとは思うが。
帰ってから3日くらいして、警察から電話があった。開口一番、見つかったかどうかを聞いたところ、まだ見つかってないとの事だった。残念。警察にはその時の情況を聞かれたが何で同じ事を聞かれるのかよくわからない。あまり意味はないだろうが、ついでにGPSで調べておいた別れた場所であろうと思われる位置を伝えておいた。それからだいぶ経って静岡県警の遭難の欄を見ると、「南アルプスでの最近の遭難事故 平成17年9月、赤石岳大倉尾根で男性登山者が行方不明」となっていた。
どれくらいで捜索できるのかを計算してみた。沢で囲まれた概ねの範囲の面積を計算すると11.7平方kmで20m間隔で捜索しようとすれば延べ292kmを歩く事になり、1時間に1km歩くとすると292時間かかり、1日10時間捜索しても29日かかる事になる。それでも発見できる可能性は30%くらいかもしれないと思う。

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