奥穂高岳(ほたかだけ)3190m

奥穂高岳頂上

新穂高温泉へは岐阜県上宝村国道471号より新穂高温泉へ向かう。新穂高温泉の終点には新穂高ロープウェイがありやや狭い所はあるが舗装道路が終点まで続いている。新穂高ロープウェイの前のロータリーの横に公衆トイレ有り。 周囲には有料駐車場がある。新穂高ロープウェイの手前500mほどの川沿いに広い無料駐車場がある。ここへの入口は深山(しんざん)荘の入口と同じなので深山荘の案内で川沿いに下る。入口から奥の方が新穂高ロープウェイに近く、駐車場の奥から新穂高ロープウェイへの近道がある。新穂高ロープウェイには水道もあるが橋を渡った所の足湯温泉の所に湧き水が汲めるようになっており、飲用可能である。

槍ヶ岳−−−>

2003年9月16日 快晴

11:33 南岳小屋出発。出発するとすぐに登山道の脇に事故が多いから注意の看板があった。大して気にもせずに通過。少し行くと、すぐに急な下りとなった。登山道の整備状態はあまりよくない。さらに行くと急な岩場となった。普通ならクサリなどがあるような急な岩場だがマークはあるもののそういったものが一切ない。そのうち急な一枚岩のようなところに出た。マークがあるのでここを降りるのだろうが何処につかまり何処に足をかければいいのかわからない。しばらく悩んで不安な気持ちでじっと岩場を見つめていると、ここを行けばという考えが浮かぶ。ゆっくりと足をかけ手を岩にかけて次第に下に降りる。左手はつかめるのだが右手のつかめる場所がない。しばらく探す。なんとかつかめそうな場所を探して片足を移動。急な岩場なので滑った場合にはどうなるかわからない。安易に通過するのは危険だ。そんなこんなを繰り返してやっと通過する。かなり苦労したが岩場はある程度はつかめるような所があり、フリークライミングに慣れた人ならそう難しいものではないように思うが私のような初心者には難しい。12:45 21分休憩。平らな所にでたので、休憩していると2人の中年女性が穂高側から来た。2人の距離はかなり離れている。私が足をたたいて筋肉をほぐしていると、何だったか忘れたが筋肉疲労に効くアンメルツのようなものをあげましょうかと言ったが丁重に断った。見ればその女性は農作業の時にでも被るような頭の周りにひらひらのついた、一見、赤ちゃん帽子をかぶっていた。私は先の道が不安だったので聞いてみると、ここは点線だからといった。古そうな地図を広げて見せてくれた。この先奥穂高までは似たような登山道が続くらしい。もっと詳しく聞くと北穂高から奥穂高まではここのルートに比べればまだましとの事だった。また、このルートは北穂高からよりも南岳方向からの方が難しいとの事だった。しかし、今更引き返すわけにもいかないので進む事に変わりは無い。... 

休憩後、出発するとすぐにだんだんと道が狭くなり30cmほどの幅の岩場で、しかも両側が切れている所に出た。周りは濃いガスで下も見えないが下が見えていたらもっと怖かったかもしれない。ホームページ用に写真を撮るという考えも浮かんだがこんな狭い所で重いザックを下ろそうとしてよろけたら大変な事になる。何より今はそんな余裕もない。ここが雨で塗れていたら引き返していたかもしれない。後からわかったのだがこれが長谷川ピークという所らしい。この先もっと怖い所があったらいやだなと思いながら必死に進むと2mほどの平らな岩に出た。先は2mほど下にある。岩の周りから下をのぞいて見るがどこから降りたらいいのか見当がつかない。ここで引き返すのはしゃくにさわる。飛び降りれば降りられない高さでもないがよろけたら下へ落ちそう。重いザックはどうしようか。危険な事は避けたい。結局、まずは足を降ろして探る事にした。岩の上に腹ばいになりゆっくりと足を下ろす。左手は岩の端に手をかけるが、右手は掴む事ができない。左にずれたら一気に落ちそう。冷や汗を掻く余裕もない。腹が滑ったらアウトなので右手を岩の端にかけて体重を右手にかける。足を叙々に下ろすが足がつかない。それでも頑張ってさらに足先を真っ直ぐにして周りを探すと左足がかかった。ぎりぎりである。左足が大丈夫そうな事を確認して左足に体重を移す。しかし、右足は足をかけられない。しかし、度胸を決めて手に力を入れ、全身の神経の限りをつくして慎重に降りる。ここで背中のザックがずれたらなどという考えがよぎるがそんな考えに裂く余裕などない。叙々に体を下にずらし、下が見えそうな所で下を見ると右足が置けそうな場所があった。ここで一気に飛び降りるようにして右足を岩にかけ登山道に飛び降りるようになだれ込んだ。セーフ。やれやれである。13:55 7分休憩。14:13 A沢のコル。A沢のコルを下から誰か登ってくる人がいる。もちろん登山道はない。岩のゴロゴロした今にも崩れそうな急斜面である。A沢のコルを過ぎても岩場の厳しい場所が続いた。オーバーハングした岩の外側を行かなければならない。テントがあるので余計に重心が外側になる。しかもうまくつかめない。冷や汗をかきながら何とか通過した。しばらく行くとさっきの人にA沢のコルへ登りきって追いつかれた。なんでも、上高地から1晩中歩き続けだったという。いつもこのルートで来るらしい。危険きわまりない。その人に北穂高山荘までどれくらいか聞いてみると、もうちょっとらしい。天気は空一面の雲で、しかも暗くなりかけてきた。雨もポツリポツリと降ってきた。ここは90度というほどの急な岩場でもなく、いつもならさっさと行くのだが、疲れてきたので慎重に登る事にした。肉体的にも疲れているが精神的にはかなり疲れた。疲れている時はミスが出やすい。急な斜面なので、滑ったらかなりの怪我になるかもしれない。岩場は何でもないような所でも滑りやすい所がある。慎重にも慎重を期する事にした。

15:40 北穂高山荘()。休憩8分。やっと到着してやれやれである。計画ではもっと先まで行く予定だったが予想より大分時間がかかってしまった。雨も降ってきそうなので無理をせずに、ここで1泊する事にした。槍ヶ岳のテント場はやや不安があったので、ここはどうなのか聞いてみた。「ここのテント場は尾根の吹きっさらしなんでしょうか」すると小屋の外の売店でみやげ物などを売っていた人は「尾根だけど今日は天気が悪くないから大丈夫でしょう」。嘘でも大丈夫と言ってくれると何だか安心。テント場までは10分くらいでトイレはここにしか無いらしい。水も残り少ないが水を買うほどではないので牛乳(¥250)を購入して、ちょっと水がわりにした。不安になりながらもテント代¥500を支払い、テント場へ向かう。15:51 北穂高岳頂上。北穂高山荘のすぐ上が頂上でちょっと広い平らなスペースになっている。今日は天気が悪く、周りは何も見えないのでそのまま通過。15:58 奥穂高岳分岐。涸沢方向へ下る。16:05 テント場。

テント場

テント場が見えるとまだ1つもテントは張られていなかった。テント場はごろごろとした大きな岩の間に平らな部分が段々畑のようにある。それほどとんがったテッペンにあるという感じは無く、周りに木が無いので強風になればそれなりだが、ごく普通のテント場である。一安心。テン場に着くと間もなく直径2mmくらいの雹(ひょう)がパラパラとかなりの数、勢いよく降ってきた。2mmくらいでは当たっても痛くはないがすぐに大きな雹が降ってくるかもしれない。急いでテントの設営にかかる。テントの場所は狭く石ころだらけなので所によってはペグを深く打てない。しかし、周囲にはよりどりみどりの石がごろごろしているので固定の石には困らない。あまりにペグが刺さらないし、今日も強風が吹きそうにないのでフライのスカートを引っ張るペグは打たずに持ってきたビニールひもで石にかけて引っ張る事にした。ペグは全部がうまく打てそうにないのでビニールひもかロープのようなものは持ってきた方がいいだろう。雹はすぐに雨になった。

テントを張り終えて急いでテントに荷物を放り込んで自分もテントに潜り込むとすぐに雨は止んだ。雨に振り続けられるのはよくないがテントに入ったとたんに止むというのも甲斐がない。その後はついに1度も雨は降らなかった。前にもこんな事があったような。夕方は雨は止んだが濃いガスで時々北穂高岳方向をのぞいてはみたが日が暮れるまで晴れる事はなかった。しかし、夜になると満天の星空が広がった。夕方、暗くなる前にテントがもう1つ増えて今日のテントは2張りになった。

テントに入っても今日の午後の行程の事が頭をよぎった。もう2度とこのルートは通りたくない。雨や天気が悪くなかったので何とかなった。結局、どこが難しかったかというと、長谷川ピークの後のあの1枚岩だろうか。後は怖かったがそれほどでもないような気がする。知っている人ならもっとうまいやり方があったのかもしれない。その後のルートにもまだ打ち込まれたばかりの杭もあったし、だんだんと掴まるところが出来て楽に通過できるようになるのだろう。あそこだって杭が1本あればそんなに冷や汗をかく事もなかっただろうに。兎に角、このルートは2度と御免である。
夜になって寝ていると右肩の背中側がちょっと痛いような。筋肉痛だろうか。今まで山でこんな経験は初めてである。足も硬くなっているようだ。明日に支障が出なければいいのだが。明日は天気になるといいな。

9月17日 快晴

朝の気温5℃。体調はまずまずで昨日の疲れは残っていないようだ。水は下から持ってきた水が0.9Lほど残ったのでここでも水は買わずに出発しよう。

6:32 テント場出発。6:39 奥穂高分岐。6:46 北穂高岳頂上()。21分休憩。7:13 奥穂高分岐。北穂高から奥穂高の登山道も結構な難所で昨日に比べればまだましだが、アップダウンのある急な岩場でしかも絶壁の岩場を登るような所もある。今日は天気が良く下を見るとめまいがしそうになる。慎重にゆっくりと登った。8:17 23分休憩。8:39 最低コル。9:35 涸沢岳。15分休憩。涸沢岳から下る途中、ガラガラと音を立てる音が聞こえた。見ると白出沢を下る人がいた。白出沢は30cmくらいの石ばかりだ。先が思いやられる。

10:06 穂高岳山荘。休憩していると小鳥がごく近くに寄ってきた()。珍しい事だ。テント¥600。水は1L¥150で雪解け水(煮沸した方がよい)との事。トイレは右手(涸沢岳側)の横にあり有料¥100。ビールは350mlが¥580、500ml¥750だった。水もあまりないので水の補給がわりという事で戻ってきたらビールを買って飲もうと決めた。それからは頂上までの往復の間、350mlにしようか500mlにしようかずっと悩んでビールが頭の中を駆け巡っていた。350mlで十分なのだが500mlの方が割安のような気がする。9分休憩。10:53 奥穂高岳頂上。残念ながら雲が多く周囲はほとんど見えず。9分休憩。11:33 穂高岳山荘。25分休憩。

穂高岳山荘に着くと早速、中に入って500mlの缶ビールを注文した。中はがらすきだったので小屋の人に断って中で飲ませてもらう事にした。ビスケットを出して昼食がわりに食べながらビールで腹に流し込んだ。すきっ腹に冷たいビールが流れ込んでいく。昼に山でビールを飲むのは初めてである。槍ヶ岳の残りの焼きシマアジも出してつまみにする。満足の一時(ひととき)である。しばらくすると2人が入ってきてカレーライスを注文した。なんだかうまそうだがさらにカレーライスを食べたら腹がいっぱいになって動けなくなりそうだ。さらに何人か入ってきてテーブルに活気がでてきた。後から入ってきた人は山の写真を撮る人のようで小屋で2〜3泊するらしい。ちょっとうらやましい。小屋の中で見知らぬ人同士が話を始めた。涸沢小屋のカレーライスとチャーハンはうまいとかヒュッテ大槍では食事にワインがついて食事もうまいとか。そう聞かされるとなんだか泊まってみたくなる。しかし、楽しい会話をそうそう楽しんでいるわけにもいかない。下までは7時間のコースだ。今から出発しても下に着く頃には確実に暗くなってしまう。満足のひとときを過ごすと、そそくさとビールを飲み干して、支度を整えて出発した。

11:58 出発。すきっ腹にビールを飲んだせいか足はしっかりしているが目がぼんやりしている。普通の酔いとは異なる変な感覚。あまり時間が無いので寝るわけにもいかず、慎重に歩を進める。あたりには白出沢の標識がないのでどっちの方向から行くのかわからない。小屋の右手に回ってトイレの先へ行ってみるとごろごろした石の上に踏み跡があった。踏み跡に沿って歩いて行くとしばらくして足元でがらがらと音がした。足元の岩が崩れた。立ち止まってあたりを見回すと左手が道のようだ。戻って道を行く。道を行けば岩は転がる事はない。よく整備されているようだ。しかし、そこを外れれば不安定な岩ばかりである。道はつづら折になっていて角々にはマークがあるがややわかりにくい。下るには上から見るのでなんとか判別がつくが登りではよくわからないかもしれない。40分ぐらいか悩みながらも道を探し探し下ると道は右手のザレになりさらに先でわからなくなった。下から誰か登ってくるので道があるか聞いてみるとあるとの事なのでそちらに行くがあまり歩きやすくはなかった。13:45 右手の登山道に入る。標識は無い。14:13 白出大滝。14:28 15分休憩。水のある場所で休憩しようと思っていたが滝を過ぎても適当な場所が無く、川を渡る場所での休憩となった。このルートでは橋は1箇所しかない。荷物を置いて、川の水を汲んでちょっと飲んでみる。冷たくてうまい。思いっきり飲んだ。飲み足らずにおかわりした。15:34 白出小屋。何か小屋が見えた。どこだろうと思ってよく見ると来る時に見覚えのある白出小屋。それほど急いだつもりはないのだが、だいぶ少ない時間で到達した。自分でもビックリした。16:09 穂高平小屋。16:39 ゲート。16:51 ロープウェイ。16:55 ロータリー。5分休憩。17:07 駐車場着。

いつものように湧き水を汲んで帰ったが冷蔵庫に入れて飲んでみると何だか苦味のような味があって、うまくない。もったいないような気もしたがうまくない水を飲んでも仕方が無いので全部捨ててしまった。時期によっては味が変わるのだろうか。

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