青薙山(あおなぎやま)2406m稲又山(いなまたやま)2405m

静岡県、静岡市。以前は国道362号から県道60号と行っていたのだが、畑薙湖から静岡市を目指すと自然に県道27号で帰る事になる。そのほうが道路もよく近いような気がする。ただ、1本道ではないので少しわかりにくい。国道1号静清バイパスから県道27号へ入る。県道27号は玉機橋(たまはたばし)の信号で左折し川を渡る。詳しくはGPSデーターを参照してください。静岡市街から畑薙湖まで全て舗装道路である。湖畔の沼平まで少し未舗装の部分がある。沼平のゲートの手前には広い無料駐車スペースがある。

前年よりGPSのテストを繰り返してきたのは、この山と白石山へ登る為の準備である。南アルプスの山に登る時に、地図にあるこの山がいつも気になっていた。せっかくなら青薙山から布引山を歩いてみたい。しかし、そのコースはどうやら登山道が無いようだ。そうなると私の力量では難しい。青薙山まで行って、その先が無理そうだったら引き帰してもいい。そんな時に携帯GPSを知った。山で迷子になる事は死に直結する。機能に比べれば安く、充分に実用的だ。青薙山が主目的だが、うまくいったらついでに笊ヶ岳にも行ってみよう。それが今回の計画である。

GPSデーター GPSについて

迷いやすいという事なのでGPSデーターには生トラックデーターを入れてあります。GPSデーターには実際に歩いたトラックデーターが入っており、青薙山から所ノ沢越のトラックデーターの95%くらいは実際の登山道を歩いていると思う。それ以外のトラックデーターはGPSが補足できない為に途切れ途切れになっていますが100%登山道を歩いています。

池の平のテント場

2005年9月9日 曇り

青薙山から布引山までは登山道が無いという事でインターネットで検索すると、迷ったなどという情報がある。コンパスで地図を見ながら道無き道を行くのは不安があるが、とりあえずどうしても行ってみたい。迷った場合も考え、食料や水を少し多めに持って行く事にした。どちらから行くかは悩んだが、布引山からは下りであり、青薙山からは登山道があったとしても青薙山の頂上は周囲よりはっきりとわかるピークではないようなので見つけられない可能性がある。そうなると青薙山からの登山道も見つけられなくなり、下山が難しくなる。それに対して青薙山から布引山は登りなのでどんどん登れば布引山に到着するはずであるという甘い考えで、青薙山から布引山方向へ行く事にした。しかし、実際はそうではなく、むしろ逆かもしれない状況を出発前にはわからなかった。地図とコンパスのほかに etrex Vista と etrex Venture の2つのGPSを持って行く事にした。実際に常用するのは電池の持ちがいいVentureのほうである。登山道や途中の水の状況がわからないので、食料と水は多めに持つことになり荷はやや重い。

青薙山登山口

5:49 沼平(ぬまたいら)出発。6:31 畑薙大吊橋。7:01 青薙山笊ヶ岳登山口(←)。まだかなと思いながら何気なく歩いて、ふとGPSを見ると少し過ぎてしまっていた。登山口あった?あれっと思いながら少し戻ると薄暗い木立の中に通じる寂れた階段があった。木の看板が立てかけてあるがよく見えない。近づいて良く見ると青薙山登山口と読めた。入口からしてマイナーそうな感じ。躊躇したくなる気持ちを抑えながら少し休憩した。7分休憩。登り始めるとすぐに分岐があった。案内が無い。困った。右は水平な道なので違うだろうと左を登る。7:40 分岐。この分岐にも案内が無い。右を登る。9:45 池の平。水場(→)。水が大量に湧いて小さい池になっている。こんな事なら水を多く持ってくる必要はなかった。池の東のやや高い所にテントが4張りくらい張れそうな場所がある。33分休憩。

赤崩から下を覗く
10:36 赤崩。山が崩壊して赤い岩がむきだしになっている断崖。いつ崩れるかわからないので断崖の近くは危険だと思う。20m以内には長く留まらないようにしたい。7分休憩。11:01 17分休憩。12:37 18分休憩。13:29 11分休憩。

14:30 青薙山。青薙山までは登山道があるとの事で実際あるが青薙山の頂上付近は少しわかりにくい。頂上には杭があるものの周囲はほぼ平で見晴らしはない。朝はいつもより早く出発したので余裕だと思ったのだが、途中で休み過ぎたので遅くなってしまった。この先は登山道不明瞭との事だったが登山道が続いているようなのでちょっと安心した。13分休憩。
出発すると10mも行かないうちに登山道が消えた。周囲を見回すが赤いテープも見えない。困ったなと思いながらも右手の開けた草地のはるか下のほうで白いものがあるような。半信半疑で草地を下りマークの近くへ行くとその先にもマークのようなものがある。不安ながら進むとその先にもマークがあって登山道もはっきりとなる。でも普通とは異なって登山道ははっきりあるものの木の枝が覆い被さっていたりする。やはり通行する人が少ないせいだろうか。でも道がないよりましである。

青薙山

しかし、良い事は続かないようで何時の間にか登山道は不明瞭になり、わからなくなる。登山道もこれまでかと考え、ふと右手の方が歩きやすそうかなと思い、右に進むと偶然にも登山道の途中に出た。ラッキー!何時の間にか登山道を外れていたようだ。稲又山の近くでは登山道はいくつも支流があるようになり、マークも無いのでGPSを見ながらそれらしき登山道を進む。GPSの距離が次第に小さくなって10mとかになると高い平らそうな場所が見え、杭があった。GPSとも10mと狂いがない。もしGPSがなかったらもしかしたら稲又山は通り過ぎていたかもしれない。稲又山は若干高いのでGPSがない場合は高いほうを歩いたほうが賢明かもしれない。

稲又山

16:52 稲又山。6分休憩。時間が遅くなったので休憩もそこそこに出発。稲又山からはまた登山道が北に続いている。安心したのも束の間少し歩くと、またまた登山道がわからなくなる。戻って見るが先ほどまであった道は全然わからない。しかし、誰かが通ったような土が崩れたようなものがあるので、こっちかと見当をつけて行くが踏跡がない。ここからは道がないのかと覚悟を決めて急傾斜をこれと思う方向へ少し下るが倒木やらでなかなか前へ進めない。こんな所ではテントも張れない。少し下った所で次はどっちへ行こうかと周囲をながめると尾根のような連続した高い場所がそれらしき方向へ続いている。なんとなくあそこが歩きやすそうだと思い、そっちへ行く事にした。よくよく見ると高い場所なので下からは、はっきりと見えないが登山道がそこにあるかもしれないと思えるような連続したものが見える気がする。登山道は経験上尾根か尾根から少し外れた場所にある場合が多い。もしかしたらと期待しながら進むと綺麗な登山道があった。かなりラッキーである。またしても偶然に登山道に戻れた。ここまで来ると登山道は連続していて所々に赤いテープのある道がずっと続いているような気がしてきた。そうは思ったものの、しばらく歩くとまた次第に踏み跡がはっきりしなくなり、赤いテープも間隔が広くて見つけにくくなった。GPSで赤いテープの場所をマークして周囲を探す。もし周囲を探索して迷いそうになったらGPSを頼りに赤いテープまで戻る事ができるようにした。しかし、この場所はちょっと急な下りの為かGPSでマークした場所まで戻っても元の位置に戻れなかった。しかも周囲を探しまわるも、なかなか赤いテープを見つけられない。日は暗くなるし、次第に不安になる。そうこうしながらも周囲を探しまわると、なんとか赤いテープが見つかって少しづつではあるが進む事ができた。
しかし、ある所で崖に出た。この崖を下るのか?しかし、崖の下に道がない。でも周囲を探しても赤いテープも無い。この崖を下るのが正しいとしたら私には危険で無理だ。引き返そうかと悩む。しかし、ここまでルートが曲りなりにもあるのだから、崖には道が無いので行くとしたら左方向だろうと覚悟を決め、道のありそうもないところを少し進んでみると道のようなものがあった。しかし、けもの道かもしれないという不安は消えなかった。そうこうしているうちに日が完全に落ちて暗くなってしまった。あいにく曇りで月明かりも無いので完全に真っ暗な状態。暗くなると薄いけもの道か登山道かわからないこの道は、もしかしたら間違っているのではないかという不安にかられた。このままずっと下まで下ってしまうのではないか。GPSは所ノ沢越まで800mを表示している。(後からGPSを分析すると350mだった。なぜ違うのかは不明。記憶違いだったかも)大した距離ではない。周りを見ても急傾斜な場所は無いように思える。それで意を決して、GPSを頼って一直線に進む事にした。それでルートを外れて、GPSのラインで進む。ところが平地では簡単だったはずのGPSは思いもかけない挙動をした。GPSの指す方向に進んだ為にGPSのラインに90°に移動してしまっている。それで違った方向へ来てしまったのに気が付いて方向を修正しようと進路を変えて進むと、今度はGPSで今まで来たルートを戻ったように表示した。これじゃちっとも近づいてない。GPSが壊れたのか?そのうちにGPSは本来、進行している方向を矢印で表示するのだが、どうも違うらしいというのに気がついた。歩きながらGPSを見ていると本来は進行方向を示すはずが90度真横だったり、時には真後ろを指したりした。それで矢印を見ないで進むのだが、通常よりも何故か現在位置表示が3分くらい遅れて表示されているように感じる。これも平地のテストでは即座に現在位置を表示して、方向転換すればすぐに表示されるものと思っていたので頭が混乱した。仕方がないので今まで来た方向から何度進路を変えればいいかという方法に変えてなんとかそれと思う方向に進むようになった。しかし、それも昼間とは異なり、真っ暗闇の中ではかなり方向感覚がマヒするという事がわかった。それでライトで今まで来たルートを照らし、それに対して何度の方向という方をライトで照らして目標物を定め、それに向かって進むという方法をとった。でもまったく障害物の無いところと異なり、必ずしも思った方向へ行けるわけではない。登山道にある倒木や岩は概ね安定しているものが多いが、こんな誰も入った事のない所の倒木は不安定かもしれない。下敷きになって脱出できなくなるかもしれない。そう考えると安易に倒木の上を通過できない。夜歩く時は明るいライトを使うべきである。暗いライトは歩きにくい。しかし、夜、歩くのは危険なので歩かないと決めてきたので荷を軽くする為に明るいライトを持ってきてなかった。そんな事もあって、あせるあまり何度かつまづいたり滑ったりして転んだ。散々であるが幸い怪我にはならなかった。そして、運の悪い事にGPSの電池が切れて途中で交換した。これで大丈夫と思ったが、その後もう1回電池交換。どうやら夜でバックライトをつけっぱなしでGPSを動かしているので電池の消耗が激しいようだ。誤算だった。まだ電池はあるが少し心配。
そうこうしながらも何とか所ノ沢越まであと20mになった。しかし、見えるはずの、それらしき場所が見えない。10m、5m、遂に0mとなるといきなり平らな所に出た。ここか?しかし、何もなさそう。やれやれ。でも周囲50mくらいを探せば所ノ沢越は見つかるだろうとあたりの様子を探ろうとライトで周囲を照らしながら90度右へ体を回すと1mも離れてない所に何かある。所ノ沢越の看板だった。恐るべしGPSの威力。

所ノ沢越

20:03 所ノ沢越着。所ノ沢越から青薙山方向へははっきりとした登山道がある。後から考えるとあのけもの道のような不鮮明な道を下ればたぶんGPSを使わなくともここへ来れただろうと思う。登山道を外れた所の状況を考えると昼間ならばそれほど迷わずに来れた可能性が高い。もしかしたら逆に所ノ沢越から青薙山へ向かうほうが登山道から外れずに行けるのかもしれないと思った。登山道はここを通過する人の多くが同じように登山道を外れ、その為、登山道以外に若干の踏み跡が出来てしまっているようなので注意が必要だ。登山道は必ずあるのでわからなくなったら戻って探すのが近道だと思う。後でわかった事なのだがGPSの矢印が進行方向にならないというのは電子コンパスを内臓したGPSであれば防げるようである。電子コンパスを内臓したetrex Vistaをその時持っていたのだが、その時はそんな事とは思わなかった。

まずはテントを張る。夜なのでわからないが周囲にはテントを張るような適当な場所は見当たらない。当然、誰もいない。所ノ沢越の看板の近くにテントを張った。近くでは水の音が聞こえているので水はあるようだ。水は明日の朝にしよう。テントを張り終えるとテントにもぐりこみ夕食を食べてから安堵感の中、眠りに着いた。夜は月もなく暗いままだったように思う。翌朝は天気がよく快晴状態。よくみると足の細長い、10cmくらいあるような大きなクモがテントの内側に3匹いた。きっと昨日の夜の歩きで転んだ時などに体について、そのまま気がつかずにテントにもぐり込んだ為にテントに入ったのだろう。ゴミ袋からビニールの袋を出してクモをビニール袋に閉じ込めて、そのままテントの外にクモを放した。テントを出るとまだ日が昇ってなく、日が昇る前に所ノ沢越から下る道を少し下り、水音が大きくなったところで川に下りると簡単に水が汲めた(→)。急ぎ水を汲んでテントに戻ると丁度朝日が昇り始めるところだった。朝日の富士山をカメラに収め、朝食を済ませてからテントをたたみ出発した。

これを書いている時にホームページを検索したところ、所ノ沢越の実際のテント場と水場は所ノ沢越から10分くらい下った川の水が湧いている近くにあるようだという事がわかりました。下記参考。
追記 水を汲んだあたりにテン場がある事がわかりました。登山道を下ると最初に沢を渡った所にあります。平らに整地されており、3〜4張り程度の広さです。水場は横の沢です。

http://www.gbros.jp/JS1MLQ/homepage/over2000m/040918kozaru/kozaru.htm

−−−>笊ヶ岳へ続く

まとめ
今回で青薙山から布引山まで登山道がある事がわかった。但し、不明瞭部分あり。登山道をたどって行けばGPSが無くても通過する事は不可能ではないように思われる。でも、迷った場合の備えは必要。登山道は数ヶ所程度間違えやすい場所があり、登山道を外しやすい。稲又山と所ノ沢越の中間あたりは登山道が消えていて、マークも間隔が離れているのでわかりにくいが、その部分は東側が急傾斜になっているので東側の急傾斜を下らないように尾根を進めば所ノ沢越に到達できるだろう。所ノ沢越の東側は急傾斜になっていて西側には登山道が下っているので登山道を外れた場合は稲又山から北東方向へ尾根か尾根のやや西側を進めば所ノ沢越に到達できる。但し、山には地図にはない細かいうねりがあり、経験がなければ実際にはそれほど簡単には通過できないだろう。登山道は全体を通して下草がそれほどなく登山道を歩く限りは藪漕ぎのような必要はない。

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