海ガメの産卵

屋久島で縄文杉と宮之浦岳登山を終えて、主要な目的を達したので、あわよくば海ガメの産卵を見てみたいものだと思いながら、尾之間にある国民宿舎、屋久島温泉でビールを飲みながらくつろいでいた。ここの温泉は露天風呂は無いものの海と山が見える、すばらしく展望の良い温泉だ。外来入浴でも¥200で入れる。

7月6日
次の日、ウミガメの産卵で有名ないなか浜へ行って下見をした。ここのあたりは駐車スペースがほとんどなく、夜になると梅雨の曇り空の為、真っ暗闇になってしまい、ライトを点けないと歩く事が出来ないので、昼間の内にルートを探しておこうと思ったからだ。(ライトを点けるとウミガメは来なくなってしまう)いなか浜と前浜の両方の下見をして宮之浦まで戻り、ガソリンを入れ昼食を食べた。
夜の8時頃になってから、また、いなか浜へ行くといなか浜の駐車場にはロープが張ってあり、海亀の生態研究の為、観察は永田集落の公民館でする旨の看板があった。永田の公民館てどこかな?兎に角、永田町の方へ行ってみると橋の手前に中に蛍光燈の入った、飲み屋の看板のような物に、海亀観察会とあった。どうしようか迷ったがそちらに行くと建物の中に受け付けらしい物が見えた。
中に入ると海亀の観察会の協力金¥500とあった。有料か。でも海亀が見れれば高くは無い。おじさんがポリバケツに入った1歳の海亀を見せてくれた。1歳にしては大きい。俺は生まれたばかりの小さい海亀が見たいんだと思ったが、後から考えるとそれは無理な注文だった。まだ孵化していないのだ。必ず見れるのだろうか。受け付けの人に聞いてみるが昨日は3頭、ここ1週間はずっと来ていると言うが確約はしない。あたりまえか。¥500玉を出して中に入った。体育館のような板の間にゴザがしいてあった。だれもいない。不安になった。覚悟を決めてゴザにすわった。ビデオを見ていて下さいと言って、ビデオをセットするがなかなか映るようにならない。慣れてないのかな。ビデオで6月〜7月の産卵から60日で孵化する事を知った。孵化は8月〜9月だ。そうか、今年の卵はまだ孵化して無いのだ。黒板に8:00〜10:00公民館で待機とあった。今は9時10分。10:00から海岸に出て観察をするようだ。9時30分を過ぎた頃から人が集まり出した。10時近くなると20人位になった。10時を過ぎたころ、昨日はもう上がったんですが、今日はまだ海亀が上がってないので、もう少し待つようにと言われた。今日はだめなのか。またちょっと不安になる。少したってから、そろそろ海へ行こうや、とおじさんが言って出て行ったので、みんな出口に向かった。すると、ちょっと待って下さい、今、探してますから。と言う声が聞こえた。どうやら、気の早いおじさんがいたようだ。まだ出てこようとする人に、私がまだなのですわって待って下さいと声をかけた。あわてて海岸に出て海亀の上陸の邪魔をさせたくなかった。私はもう1度ゴザに座ったが、立ってうろうろする人、外でたばこを吸う人、みんなビデオどころではなくなった。しびれを切らしたようだ。私は徹夜の覚悟を決めた。しばらくすると、海岸へ出て待ちましょう、と言うので、車で永田町の前浜の近くへ移動して海岸べりの防波堤の道を歩き始めた。案内の女性(と言ってもおばさんだけど)はライトを下にして海岸の方へ光を当てないようにして、先頭を歩いている。私は懐中電灯を持っていたが懐中電灯は出さずに暗闇の中を歩いた。月明かりはないが星は見える。街路灯で少し明るいが充分とはいえない、なんとか歩ける明るさだ。おじさんたちは元気だ。他愛も無い話をしながらわいわいがやがやと歩いている。中には鍵束をぶら下げているのだろう、歩く度にじゃらちゃらと音を立てている人がいる。とても海亀の観察会をしましょうという雰囲気ではない。中には20代の若い男女もいるがこちらは静かだ。状況を把握しているとみえる。しばらく歩いてから海へ出る階段のところで待つ事となった。10時30分頃になると話疲れたのかおじさん達が静かになった。浜ではカメ研の人が海亀を探しているようだ。海亀は産卵を始めると明かりで照らされても最後まで産卵するが、その前に邪魔をされると海へ返ってしまうという。
10時40分を過ぎるとしびれを切らしたのか今度は若い女性がおしゃべりを始めた。あ〜あ、頼むから海亀よ逃げないで。10時50分頃になるとおじさん達が明日は登山せなあかんのや、と言って返って行った。11時7分、ついに海亀が産卵を始めたので、そちらへ移動しましょうという事になった。2人の亀研の人が亀専用の特大ノギスを使って大きさを測り、これは大きいやと言いながら、ノートに記入していた。私はちょっと出遅れたので、後ろからは産み落とした卵は見えない。急いでデジタルビデオを回すが、ごく1部しか写らない。懐中電灯の光では写らないのだ。全体が写らないと後で誰かが見ても、たぶん分からないだろうと思ったが、ここで私の懐中電灯を出してもとても間に合わない。カメラも持っていたがフラッシュが光ってしまうので、海亀さんに申し訳ないので諦めた。亀研の人がピンポン玉のような海亀の卵を2個、今、産卵したばかりのやつをつかみ取って、みんなに回した。私は亀の後ろに回って、まだビデオに執着していたが、ガイドの人が卵が見えますか、と言ったので、すかさず、いいえと言うと、交代で見て下さい。といってくれて、前列にいた若い女性の3人組みが譲ってくれたので、わたしはテレビで見るような丸い穴の中に20個程はある卵が見えた、そしてガイドの方がライトで卵を照らすと、ビデオにピンポン玉のような卵が写った。卵を見れるのは、穴の正面の1人か2人しか見えない。やった!5〜10秒ビデオを回した後、私は満足して、その場所を譲った、とたんに、無残にも海亀は砂をかけ始めた。私の後の人は、多分1〜2秒しか見られなかったろう。(海亀の産卵シーンは20分位は見れるので、今度行く人は交代で見てね)
11:45亀研の人が、これで海亀の観察会を終了します、と言って観察会は終了した。
これから、屋久島で海亀を見ようとされる方は、暗い海岸で海亀を肉眼で探すのは難しいので、この観察会に参加された方がいいと思います。但し、申し訳ありませんが、電話の問い合わせを何処にしたらいいかはわかりません。

左の写真が海亀の産卵ビデオです。

ちょっと、わかりにくいですが、中央に卵が見えます。右上が海亀です。明るい光の輪は懐中電灯の光が輪になっている為です。肉眼ではもっとはっきり白い卵がいくつも見えました。